皆様は、「ピザ釜のあるお家」と聞くと、どの様な事を想像されますか?

イタリア(ヨーロッパ)の風景でしょうか?
自然の中にひっそりと佇む丸太小屋でしょうか?
ホームパーティーが好きな家庭でしょうか?
もしくは、そんなお家は見た事も聞いた事もないし、想像もできない、とおっしゃるのでしょうか?

僕も、今までは「ピザ釜が家にある事」なんて、全く想像した事はなく、ましてや作ろうと考えた事もありませんでした。

そんなピザ釜を「自分で作ってしまおう」と考え、実行しようとしている人がいます。うち(茅ヶ崎ファーム)のキャプテンです。

約2年前に、児童養護施設・茅ヶ崎学園がサーフサイドセヴン茅ヶ崎ファームに生まれ変わり、建物を全面改築した際に、キャプテンの構想の中に入っていたのです。「新しいおうちの形」の構想の中にピザ釜は入っていたのです。

『児童養護施設にピザ釜を作る』という考え方でなく,
『茅ヶ崎ファームとは、そこに暮らす子ども達にとっては“我が家”だから、その我が家にピザ釜があったら素敵だな』とでも考えたのでしょうか?
それとも、「旧来の児童養護施設像への挑戦」なのでしょうか?
はたまた、「将来の児童養護施設像への提案」なのでしょうか?

いずれにしても、僕は、最初にピザ釜構想をキャプテンから聞いた時は、にわかには信じられませんでした。だって、ここ茅ヶ崎ファームは「児童養護施設」であり「社会福祉施設」なんですから。児童養護施設にピザ釜がある事なんて、想像できますか?

しつこいですが、僕は最初は信じられませんでした。何より、「ピザ釜のある児童養護施設」なんて、聞いたことありません…

そんな職員集団をよそに、キャプテンは本気でした。本気である事は、話を聞いたらすぐに解りました。だって、キャプテン、真顔でピザ釜構想を語るんですもん…

(僕は茅ヶ崎ファームに来て7年が経ちましたが、キャプテンは冗談でそんな事を言う人ではない、と知っているつもりでいたと同時に、従来の社会福祉が持つ概念の枠組みを、軽く飛び超えてしまうアイデアの持ち主である事も、知っているつもりでした)

うちのキャプテンは、研究熱心で本物を追及する人、また一切の妥協を拒否する人ですから、そんな人の考える、ピザ釜はまさに本格的。と同時に、精神の開放と真の自由を探求する人でもあるので、そんな人のピザ釜構想にはついていきたくもなります。

そんなキャプテンの構想を聞いた時に、私の中にある、なにやら熱い物が胸の中で騒ぎ始めました。

「ピザ釜作るの、面白そうだなー!」
「ピザ釜がある養護施設なんて、日本では、イヤ世界でも聞いた事ないぞ」
「何より、子ども達に手作りのピザを食べさせてあげられるなんて最高じゃん!」
などなど、僕は一気に胸騒ぎがしてきました。ワクワク,ドキドキ… ワクワク
私が、ファームにピザ釜が出来た後に思い浮かべている光景とは…

大人がピザを焼こうと準備をしていると、そこに子どもが「何をしているんだ?」と、不思議がりながら、ポツンポツンと集まりだす。

子ども;「ネェ、ネェ なにやっているの?」
ボク ;「ここで、ピザ、焼くんだよ」
子ども;「え~、そんなのでちゃんとできるの~?」
ボク ;「どうかな~、上手くできるかな~?少し待っていてね、お楽しみ」

火を囲みながら、火を見つめながら…
しばしの間、
子どもは半信半疑で、大人(職員は)ドキドキしながら出来上がりを待つと…。手作り生地に、ピザソースとチーズだけのシンプルなピザが出来上がり!

子どもにとってピザと言えば、宅配ピザやお店で売っている具がたくさんのっているものに慣れているので、具がないピザにちょっと残念、期待はずれ? が、それを一口、口に運んだとたん……

「アツっ! ホフっ ん?…… うまいっ!!!!!! おいち~!!!!!!」

直火で焼いたので、外はサックリ中はモッチリ。直火焼きのうえに、手作りの生地なので、具はなくともそれだけで充分に美味しいのです! 周りが少しクロ焦げた生地の上で、チーズがトローーーーリとろけたピザを頬張る子どもの顔は、例えようのない笑顔。まさに、地上の天使…。いつも一緒にいる大人(職員)が、目の前でこんなに美味しいピザを作った事に子ども達はビックリ! そんな子ども達のよろこぶ顔を見て、大人もニッコリ…

こんな期待と妄想(?)がふくらむばかり…

キャプテンに聞くと、ピザ釜を作る工程とは、石を一つずつ積み上げていって、最初は豆電球を点して釜(石)を熱に慣れさせていく、とのこと。さらに、最初のうちは一晩中、寝ずに番をする、とのこと… この「寝ずの番」と言う響きに、僕は心惹かれました。

私は昔から「職人の仕事」に憧れを持っていたので、なんかこのピザ釜作りで、僕も職人の真似事ができる様な気がしてきました。

が…、この「寝ずの番」、僕の大きな勘違いでした…。

キャプテンとピザ釜作りの話をしている中で、キャプテンから陶芸作りの話も聞き、“陶芸家は焼の段階では寝ずの番をする”という話を、当時舞い上がっていた僕は、ピザ釜作りでもやるのだと勝手に勘違いしていたのでした。しかも「自分がやれる!!」と…。後日これが僕の大きな勘違いとわかり、ちょっと恥ずかしい…。

ですが、“勘違い”が判明した後でも、僕のピザ釜作りへの情熱は冷めません。確かな炎、は僕の中で小さく灯り続けています。だって、寝ずの番はしなくとも、職人の真似事はできるのですから!

『コツコツと石を積み上げ、完成を目指す』

この言い回しに、従来大げさな僕は、スペインにある“ガウディー設計のサクラダファミリア教会”に勝手になぞらえてみたりして…

「手作りの生地」は、キャプテン自ら研究開発の最終段階でほぼ完成間近? 「設計図」と「実際に積み上げる石」は先日業者から届きました。なんと「石」は、遠路はるばる石川県から届きました。この石、届いてすぐに実際に持ってみたのですが、これが「惚れ惚れする位に重い…」。

「いいねぇ~」と一人で微笑む僕(ちょっと気持ち悪い)。
「この石を設計図を基に積み上げていくのか…」
「そして、“寝ずの番”か…」(勘違いでしたが)
「その暁には“子ども達のこの上ない笑顔”か…」
僕の期待と妄想は膨らむばかり…。

一応の準備は整ったのでしょうか?キャプテン。後は、キャプテンのゴーサインが出るのを、待つばかり…? 早く、やりましょう!キャプテン。子ども達の笑顔が待っていますよ!

キャプテンも僕ら職員も、日々の生活に追われるばかりで余裕はまったくなし… これが現実…。でも、近いうちに必ずや製作にとりかかれるでしょう! きっと…。子どもの素敵な笑顔にも出会えるでしょう! 間違いなく。その時はきっと、このホームページでご披露できるのかな…?

子どもたちよ、待ってろよ!