無数に、そして美しく組み合わされた鉄筋、そしてその結束作業。
鉄筋は、
建物が完成してしまえば人の目に触れることなく、意識にすら上りません。しかし鉄筋コンクリート建造物を支えているのは、まさに、この鉄筋に他ならないのです。
鉄筋の数、位置ともに、
計算どおり施工されなければ設計強度が出ず、脆弱な建造物となってしまいます。阪神大震災で倒壊した高速道路の橋脚では、鉄筋の配筋不足が大きく問題視されました。
つまり、見えないところで、人が手を抜いたのです。
またそもそも
鉄筋の酸化による腐食は、即、その建造物の崩壊をも意味します。
ですから、予算がゆるせば素材はステンレスがいいということになりますが、
いずれにせよ、
いかに鉄筋を錆びさせないか、
これこそがその建物の強度、耐用年数にかかわる勝負どころとなるわけで、
このことは鉄筋コンクリートにとって、
生コンの問題(アルカリ分や水分、打設方法)とともに、もっとも重要な要素です。
鉄筋とは、
それほどに、重要な存在なのです。
さて一方、
上の写真にあるように、数千、数万本の鉄筋を1本々々組み上げてゆくのは、
すべて職人による手作業です。
その建物を支える、文字通り骨組みとなる作業でありながら、
地味で単調で、表立って評価されることのない仕事です。
建物は、
デザインや機能が耳目を集めることはあっても、
鉄筋を組上げた職人が賞賛されることはないでしょう。
黙々と行なわれるそのような作業を見ていると、心打たれるものがあります。