♪ 灯りをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花
五人囃子の笛太鼓
きょうはたのしいひな祭り ♪

♪ お内裏様とお雛様
ふたり並んですまし顔
お嫁にいらした姉さまに
よく似た官女の白い顔 ♪

♪ 金のびょうぶに映る灯を
かすかにゆする春の風
少し白酒めされたか
赤いお顔の右大臣 ♪

♪ 着物を着換えて帯締めて
今日は私も晴れ姿
春のやよいのこの良き日
何よりうれしいひな祭り ♪

我々関東の人間にとっては お雛様の男雛は向かって左に座っているのが見慣れた飾り方ですね。そして日本ではそれが主流ともなっています。
ところが 京雛では (向かって)右が男雛の定位置なんですよ。
何故でしょう。
これは 京雛では古来の「左上座」という思想に則った御所の玉座を模しいてるためなんだという説。
(「左」とは 庶民から向こうを見れば「右」)

雛人形の種類 京雛|雛人形、五月人形、羽子板、破魔矢なら|人形の佳月

では何故関東では男雛を「左」に飾るのか。これに関しては 大正天皇を発端とする説があります。
どういうことかというと 大正天皇の即位の礼で 洋装した大正天皇の左に皇后が立ったんだとか(つまり庶民から見れば 天皇が「向かって左」)。これは西洋文化の「右が上位」にならったものだということです。
「日本の中心は皇居」なので その作法が「日本の作法」となるわけで その皇居が東京にあれば そこから広がってゆくというわけですね。

原武史「米国は皇室に深く入り込んでいる」 拡大写真 - 石川智也|論座 ...

いずれにせよ これが全国的に浸透してしまっている状況は 「昔の都」であった京都の人々?(あるいは京文化に価値を見出している人々)にとっては 「東の京都」に主流を奪われて 苦々しく感じているかもしれませんよ。

ところで ヘンだなと思って調べてみて やっぱりということがありました。
「お内裏様」というのはそもそも「天皇皇后の二人」を表す言葉だということ。「内裏」とは御殿のことですからね。「御殿にいらっしゃるお二人」が「お内裏様」
それと「お雛様」と言う場合も 「男雛」「女雛」両方を指すということです。

ついでにもう一つ。
♪ 赤いお顔の右大臣 ♪
というのは間違いではないかとの説。

雛人形の随身(隋臣)のお役目とは?右大臣・左大臣というのはなぜ ...

ほんのりお顔が赤くなっているのは 右側にいる人物です。
普通これを「右大臣」と呼び 天皇を護る「随臣」だと解説されています。
しかし向かって右にいるのは玉座からみれば左なので 「左大臣」でなければいけないのですよ。
つまり 赤いお顔の人は「左大臣」なんですね。
ちなみに 左大臣は議政官なので天皇の護衛はしない。だから弓や刀で武装しているはずはないんですよ(左大臣は議政官としての最高位)。
(もひとつちなみに 「右近の橘 左近の桜」というのは 「天皇からみて」右 左となっています。だから「左近の桜」は向かって「右」に飾る)

この歌の作詞はサトーハチローですね。たくさんの歌を書いた作詞家として有名な人ですし TVにも出ていて その姿からして親しみのある人物ではありました。きっと ほのぼのした歌として抒情的に書いただけで いちいち時代考証などはしなかったということでしょうね。

とまあ 「日本古来の」とか 「伝統文化の」とか言っても いろいろと混同があったり なし崩しがあったり 時の流れで変化したりするわけです。いずれにせよ 「お雛様」とは封建制度の典型をみる飾りものですからねえ キレイではありますが そもそもからして納得できるものではありませんねえ。